HIV/AIDSと性感染

セックスをする相手には,HIVに感染していることを告げなければいけませんか?
その相手が恋人やパートナーのような存在であり,かつ,コンドームを使用しないセックスの場合には,感染の事実を伝えた方がよいと思います。

解説:性交渉時の真実告知

(1)HIVの性感染率の低さ(0.1%〜1%と言われています。これに対して淋病の感染率は20%〜30%と言われています),(2)HIV感染の事実は特に秘匿性の高いプライバシーであることから,コンドームを使用する性交渉の場合には,HIV感染の事実を相手方に告げる義務はないでしょう。
それでは,コンドームを使用しない性交渉のときはどう考えるべきでしょうか。
まず,ハッテン場や出会い系サイトで知り合った相手とのその場限りの性交渉の場合は,真実を告知する義務はないでしょう。なぜなら,HIVの性感染率の低さ等に加え,(3)ハッテン場等を利用して性交渉の相手を探し,コンドームを使用しないで性交渉をする場合には,HIVを含む性感染症に感染するリスクを各自が引き受けていると考えられる,(4)その場限りの性交渉の相手との間には真実告知を基礎づける信頼関係がないからです。このことは,仮に相手からHIV感染の有無を問われてHIVに感染していないと嘘をついたとしても同じだと考えます。なぜなら,その場限りのセックスの相手が正直に真実を告知するとは一般的には考えらないからです。
しかし,性交渉の相手が恋人やパートナーの場合には,(3)と(4)の根拠は成り立ちません。つまり,HIVの性感染率が低いと言っても,恋人やパートナーであれば多数回性交渉をすると考えられ,感染のリスクは現実的なものと言えるでしょう。また,恋人やパートナーというのは,信頼関係に基づく親密な関係です。したがって,恋人やパートナーを相手にコンドームを使用しない性交渉をする場合には,HIV感染の事実を伝える義務があるとされ得るでしょう。

HIVを感染させた相手に法的責任を追及することはできますか?
損害賠償の請求,刑事告訴(傷害罪等)が考えられますが,実際上困難でしょう。

HIV感染の責任追及

損害賠償の請求にしても,刑事告訴にしても,相手とのセックスによってHIVに感染したことを立証することが最大のハードルです。
単に,相手が現在HIVに感染していたこと,相手との間にコンドームなしのセックスがあったこと,あなたが現在HIVに感染していることだけでは,相手とのセックスによって感染したという事実の立証は不十分です。コンドームなしのセックスが行われた時期に,相手がHIVに感染していたこと,そのときにあなたがHIVに感染していなかったことも立証しなければなりません。また,HIVに感染したと思われる時期に,その相手以外ともコンドームなしのセックスをしていた場合には,その相手以外の人物がHIVに感染していないことの立証も必要になる場合もあります。
以上のことからも,相手とのセックスとHIV感染の因果関係の立証のハードルが高く,損害賠償請求をするにしても,刑事告訴をするにしても,相手に法的責任を追及することは,実際のところ難しいでしょう。

著者プロフィール

前園 進也
前園 進也弁護士
作家であり新宿二丁目のミックスバーのママ・伏見憲明氏から多大な影響を受け、LGBTに対する法的支援をライフワークとして取り組んでいます。LGBT支援法律家ネットワーク、同性婚人権救済弁護団、「結婚の自由をすべての人に」弁護団等に所属。