同性に告白されたことを誰にも言ってはいけないの?
はじめに






プライバシーの侵害
「宴のあと」事件とプライバシー権
プライバシーは,三島由紀夫のモデル小説「宴のあと」にまつわる裁判(東京地判昭39年9月28日判タ165号184頁)が有名です。その裁判では次のようにプライバシー権の意味とその要件を論じています。
プライバシー権は私生活をみだりに公開されないという法的保障ないし権利として理解される
(中略)
プライバシーの侵害に対し法的な救済が与えられるためには、公開された内容が(イ)私生活上の事実または私生活上の事実らしく受け取られるおそれのあることがらであること、(ロ)一般人の感受性を基準にして当該私人の立場に立つた場合公開を欲しないであろうと認められることがらであること、換言すれば一般人の感覚を基準として公開されることによつて心理的な負担、不安を覚えるであろうと認められることがらであること、(ハ)一般の人々に未だ知られていないことがらであることを必要
プライバシーの上記3つの要件は、順に
1. 私事性
2. 秘匿性
3. 非公然性
といいます。
プライバシー権の根拠
プライバシー権の根拠は憲法13条にあります。もっとも、プライバシー権は憲法13条に明記されているわけではありません。しかし,「新しい人権」の一つとして、プライバシー 権が認められることに争いはありません。
アウティングはプライバシーの侵害?
アウティングとは、本人の了解を得ずに、本人の性的指向や法律上の性別などを他者に明かすことといわれています。
一般的に、アウティングはプライバシー権の侵害にあたります。
今回のケースについては次のように考えます。同性に好きだと告白した事実はその告白した人のプライベートに関する事実ですので、秘事性は認められます。同性に好きだと告白した事実は、その人が同性を好きになる人(同性愛者やバイセクシュアルなど)だということを意味しますので、現時点の日本においては、公開してほしくないと考えられますので、秘匿性は認められます。告白した人がカミングアウトをしている有名人でなければ、一般の人にその人が同性を好きになる人だということは知られていないと考えられるので、非公然性も認められます。


個人の特定








著者プロフィール

- 弁護士
- 作家であり新宿二丁目のミックスバーのママ・伏見憲明氏から多大な影響を受け、LGBTに対する法的支援をライフワークとして取り組んでいます。LGBT支援法律家ネットワーク、同性婚人権救済弁護団、「結婚の自由をすべての人に」弁護団等に所属。
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